WEBサイトを軸にしたビジネスのあり方を顧客と共に考える専門集団|有限会社ハビタス HABITUS inc.

#19 愉しい知識

Feb 25, 2025By 徹全 TETSUZEN
徹全 TETSUZEN

孤独に悩みがちな経営者・マネージャーが、困ったとき、迷ったとき
-人を助け、チームを助け、企業を助け、共に考える、愉しい知識 -


【不確実性と向き合う、知識の力】
私たちを取り巻く世界は、常に曖昧さと不確実性に満ち溢れています。
人間の活動に左右されるビジネスにおいても、マネジメント層は常に、その不確実性と曖昧さの中で、孤独に判断し、決断を下さなければなりません。

しかし、どんな判断材料もなく決断することは不可能です。
野球の故野村克也監督は、名言集が出ているくらい名言を残した人ですけど、
「決断しなければならないとき、ピンチを脱出しなければならないとき、必要なのは豊富な知識である」と述べています。
野球に限らず、ビジネスにおいても、知識は重要な武器となります。
幸いにも、現代では、ビジネスに関する知識は容易に手に入れることができます。


【本当に必要な知識って?】
しかし、情報過多の現代において、私たちはどんな知識を得ればいいのか迷ってしまうことがあります。

専門的な知識を聞きかじって基本を忘れてしまったり、大量の情報をかき集めることに始終したり、目まぐるしく変化するビジネストレンドに振り回されたりして、結局、ビジネスで失敗してしまうということも少なくありません。

ウェブサイトを運用する企業にとっても、状況は同じです。
判断するための知識は、毎日のように新しい技術やマーケティングトレンドが喧伝されますが、その多くは、わずか一年も経たないうちに忘れ去られてしまいます。
いつでも得られる情報はたくさんあるけれど、どれを選べばいいのかわからない。
そんなジレンマを感じている方も多いのではないでしょうか?


【失敗から学ぶ、基本の重要性】
私たちハビタスは、20年以上、ウェブ制作会社として、数百のウェブサイトを構築してきました。

しかし、顧客に喜んでいただいたウェブサイトが、必ずしも成功したウェブサイトであったとは限りません。
むしろ、自分たちの感覚的には失敗の方が多かったのかもしれません。

20年間の失敗事例は、他社にはない貴重な財産です。
私たちは、その多くの失敗からたくさんのことを学びました。

なぜ、私たちは失敗したと思うのか?

それは、顧客のビジネスの基本に立ち返ることなく、寄り添うことなく、目先のトレンドにばかり目を奪われて、ウェブサイトを構築してきたからではないかと自己反省するのです。

先頃、アメリカ野球殿堂(The National Baseball Hall of Fame)入りが決まった、イチロー選手は、現役時代、基本の動作を毎日何年にもわたって繰り返していたと言われています(今もそのまま続けているという噂もあるようですが…)。
彼の偉大な成績を思えば、いかに基本に忠実であることが重要なのかを思い知らされます。

だからこそ、私たちは、顧客のビジネスをどのようにウェブサイトに反映させるのか、何をフォーカスするのか、もう一度基本に戻って、数々の失敗例を反面教師としつつ、考え直す必要があるのです。
ウェブサイトの基本に帰り、改めて基本を反芻し、顧客と共に、答えを探す努力を続けたいと思います。


【対話から生まれる、真の知識】
古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、「産婆術」という対話の方法を生み出しました。
これは、人と人が対話するという基本に返り、真理を見つけ出すための手法です。

産婆術の重要な点は、対話する相手の中にすでに真理(答え)があり、対話はそれを導き出す手助けをするということです。

「しかし、事実は、あなたはお気づきになっていないが、その言論のうち何ひとつだって私のところから出ているものはないんですよ。いつもそれは私と言論を交える相手の方から出ているのです。そして私の知識していることといっては、ごくわずかなこと、つまり、ただ知恵のある他の人から言論を出させて、これを度にあった仕方で受け入れるという、それだけのことしかないのでして、それ以上のものは何もないのです。」(プラトン『テアイテトス』161B)


【顧客の中に眠る、答えを引き出す】
そう、真理、すなわち答えは、顧客であるあなたの中にあります。

私たちには、20年のウェブ制作会社としての経験と知識、そしてたくさんの失敗例があります。
しかし、だからといって、私たちがすべてを知っていて、あなたに答えを提示できるわけではありません。

ビジネスはあなたのものです。
あなたが情熱を注ぎ、苦労しながら行っている活動です。
世界中の誰よりも、あなたがあなたのビジネスを最も熟知しているのです。

私たちの知識と経験は、あなたから、あなたがすでに持っている答えを引き出すための、単なる手助けに過ぎません。

対話の中で得られた「答え=知識」は、誰かに与えられたものではなく、あなた自身が基本に返り、自ら考え、得た知識です。
これこそ、ピンチの時に役立つ知識、立ち返るべき知識、すなわち「愉しい知識」ではないでしょうか?
ニーチェが『La gaya scienza(悦ばしき知識)』で示したように、知識は単なる情報ではなく、喜びや肯定感、そして創造性を育むものでもあります。

共に考え、探る、愉しい知識。