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#23 中小企業のウェブサイトは『webの常識』につまづく

Mar 04, 2025By 徹全 TETSUZEN
徹全 TETSUZEN

WEBの制作会社を約20年近くやっていると、大企業のサイトを作るよりも、中小企業のサイトを作る方がはるかに面白いと感じているのです。これは、おそらく多くの制作会社が共感する点ではないでしょうか。

もちろん、顧客に安心感を与えるためには、大企業の制作実績をアピールする方が効果的なのは事実です。しかし、実際には作るときも作った後の成果も出やすいのは圧倒的に中小企業のウェブサイトなのは、制作会社の人でなくともわかると思います。

中小企業のウェブサイト制作の魅力は、まず、担当者や経営者から直接、悩みや問題点を聞くことができる点にあります。これにより、制作会社は顧客のビジネスを深く理解し、共に課題解決に取り組むことができます。その結果、より効果的なウェブサイトを制作することができるのです。

中小企業には、それぞれの業界の掟や、人員、担当者のリテラシーなど、様々な事情があります。また、社内事情が属人的であったり、経営者の思い入れが強かったりすることも少なくありません。これらは、巷で言われている「webの常識」からはかけ離れた事情であることも多くて、世の中に流布する「こうすればあなたの会社のwebサイトはうまくいく」的なものと相反することも多い。

これらの事情は、一般的に言われる「webの常識」とはかけ離れていることが多く、制作会社にとっては対応が難しいと感じる点もあるでしょう。しかし、ウェブサイトは大企業も中小企業も関係なく、横並びのメディアです。むしろ、これらの「細かな!事情」こそが、その企業の特徴や魅力となり、他社との差別化につながる可能性を秘めているのです。

最近、中小企業の経営者の方々からご相談をいただく際に、5年、10年前に作ったサイトをそのまま放置しているというケースに多く直面します。これは、かつてはあまり見られなかった現象です。

話を伺うと、「制作当時は気合いを入れていたが、結局運用の組織を作れなかった」「ビジネスに大きな影響がなかったため、忘れていた」「SNSに注力していた」といった理由が挙げられます。

もちろん、これらの理由は決して恥ずべきことではありませんし、ウソを言っているわけでもありません。しかし、現実としてこのような状況が起きていることは、私たちウェブ制作会社にとっても大きな課題です。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。それは、私たち制作会社が、「その時、できる限り言われるものを作る」「お客様の要望を忠実に実現する」ことに注力しすぎてきたからではないでしょうか。
「原稿いただけませんか?」「コピーは何にしましょうか?」「デザインはこんな感じでどうでしょう?」

かつて、このような制作会社とのやり取りを経験された方も多いのではないでしょうか。

企業のウェブサイトは、ビジネスを成功させ、会社をサポートするための重要なツールです。だからこそ、「うちの会社のウェブサイトを作って」ではなく、「会社にとって何が重要なのか」「ウェブサイトで何を達成したいのか」を明確に伝えるべきなのです。親切な制作会社は、その要望の内実を一生懸命聞き出そうとしたかもしれません。

しかし、多くの企業は、ウェブ制作会社にビジネスの根幹を話す必要はないと考えているのではないでしょうか。あるいは、普段銀行やお客様に話していることを、また繰り返すのは面倒だと感じているのかもしれません。中には、制作会社に話しても理解してもらえないと思っている方もいるでしょう(ある意味正解ですけど…)。

このような状況が、5年、10年と放置されたウェブサイトを生み出している原因の一つではないかと私は考えています。

その間、思いついたかのようにうちのホームページなんとかしなくちゃと何度も考えたはずです。でもどうしていいかわからない。結局、社内の圧力もあったり、時勢を考えて、リニューアル!を試みるものの、世の中の「webの常識」にとらわれてしまったりして、同じ事を繰り返してしまう。とりあえず以前のコンテンツそのままにウェブサイトの再生産が行われ、その時は満足するものの、なかなかビジネスに結びついていかない。
成果は出ない。放置される…。時代はDXなどと巷では喧しいけれども、どこを向いていけばいいのかわからないまま、リニューアルされたウェブサイトは公開されているわけです。

つまり、企業側も制作会社側も、互いに「webの常識」という枠にとらわれ、本当の意味でのコミュニケーションを怠ってきたと言えるのではないでしょうか。企業側は「webの常識」に沿った要望を伝え、制作会社側は「webの常識」に沿った制作を行う。その結果、本当に必要なものが見失われ、形骸化したウェブサイトが量産されてしまうのです。

ここで言う「webの常識」とは、例えば「最新のデザイントレンドを取り入れる」「SEO対策を万全にする」「スマホ対応にする」といった、一般的に良いとされているウェブサイトの条件のことです。しかし、これらの「常識」は、あくまで一般的なものであり、すべての企業に当てはまるとは限りません。

企業のウェブサイトは、それぞれの企業のビジネスモデルや顧客層、そして経営理念を反映した、唯一無二のものにしたいし、実際になり得るわけです。そのためには、「webの常識」にとらわれず、自社の課題や強みを深く理解し、それを表現できるウェブサイトを構築することが重要です。もったいないので「業者に丸投げ」は辞めた方がいいでしょう。

わたしたち制作会社もまた慣れてしまった「webの常識」から、今一度「考えるヒント」を探してみたいと思います。