#179 Key Persons Insights - Webサイトとマネジメントの視点 - Vol.1【後編】

Dec 03, 2025By habitus
habitus
Webサイトとマネジメントの視点
- - - K E Y P E R S O N S I N S G H T S - - -

ウェブサイトは「費用」ではない。「経営戦略」そのものだ

〜元VC・現役外資IT幹部D.H氏が語る、小さな会社がウェブに投資すべき理由〜

【前編の振り返り】

前編では、ウェブサイトへの投資は「会社の未来への投資」であり、コンテンツ戦略を通じて顧客に「選ばれる理由」を明確に伝えることが、ビジネスの成功に不可欠であることを確認しました。

後編では、その投資を成功させるための具体的な考え方や、パートナー選びのポイントについて、D.H氏の経験に基づいた視点を伺います。

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ウェブサイト制作は「要件定義」が9割
:安物買いの危険性

聞き手(ハビタス): 前編で、ウェブサイトへの投資の重要性が分かりました。しかし、多くの中小企業は「安価な制作会社を選んで失敗した」という経験があります。価格競争の中で、良質なパートナーを見極める基準についてお聞かせください。

D.H氏: 大規模なシステム導入のケースで最も重要なのは、要件を決めること、つまり「何が目的で、何を外せないのか」を明確に言語化することです。この言語化ができず、ガイドができる人がいないと、安きに流れてしまう。結果として「安物買いの銭失い」になるのです。

ウェブサイト制作のような無形商材は、高くも安くも提供できるため、特に危険性が高いと言えます。発注者側が「何を絶対大事にしてほしいか」を、パートナーと一緒に言語化する必要があるのです。

聞き手(ハビタス): 要件定義ができないまま安い業者に頼むと、制作側も「オペレーター化」し、言われた通りに作るだけになってしまう。これでは、当然ながら成果は出ません。

D.H氏: その通りです。また、ウェブサイトは一回納入して形が変わらない自動車などと違い、常に途上にあるものであり、「完成」がありません。常に周りのさまざまな変更を織り込んでいけるのが特徴です。この「常に手を入れていく(運用)」という認識が、発注者側には難しい。これが、うまくいかない大きな理由の一つです。

デジタル商品は、「完成した何かを買う」のではなく、「育てていく」ものだと発想を変えることが重要です。

 
IT投資の基準と理想の配分:
「守り」と「攻め」のバランス

聞き手(ハビタス): ウェブサイトを「育てていく」には、継続的な予算が必要です。中小企業がウェブサイトも含めたIT投資を考える際の目安や、適切な予算配分について教えてください。

D.H氏: まず、公的機関の統計資料などを参照すると、日本国内の企業は売上高に対して0.3%はITに使うのが普通、というレベルの話があります (編集部注1)。業種によっても異なり、製造業や小売流通業は1.5%程度ですが、金融やIT業界は5〜10%と高いです。ご自身が属する業種の平均値を知り、それを超えるかどうかが最初の判断基準になります。

そして、IT予算総額をさらに分けると、「守りの予算(維持)」と「攻めの予算(新規ビジネス創出)」に分けられます。

・日本の現状: 維持(守り)に8割、新しいもの(攻め)に2割。
・理想的な配分: 守りに6割、攻めに4割。

ITはあくまで経営ツールであり、本来は新しい利便性を生み出す「攻め」に、もっとお金が使われていると健全です。初期費用よりも、その後改変したり維持したりする運用に多額のお金を使うケースの方が、うまくいっていることが多いのです。

 
パートナー選びの基準:
フラットに付き合える相手を探す

聞き手(ハビタス): 最後に、中小企業が「いいパートナー」を見つけるための基準を、経営者視点からお聞かせください。

D.H氏: 重要なのは、予算内で一緒に伴走を長くしてくださる会社を見つけることです。

デジタル領域は慢性的に人手不足であり、制作会社も実は仕事を選んでいます。コンペで条件が悪すぎると、パートナーの方から断りを入れるということも起こっているのが現状です。

つまり、発注者もパートナーを選ぶ視点がありますが、パートナーもお客様を選んでいるのです。極めて健全な意味で関係が対等になってきているため、フラットに付き合いができる相手をお探しになるのが肝要です。

聞き手(ハビタス): ありがとうございます。ウェブサイトは、人口減少や経済縮小が進む中で、人手不足の解消や営業活動の活性化のために、最もコストパフォーマンスの良い手段です。まずは、そのウェブサイトの「健康診断」から始めるべきということですね。

D.H氏: その通りです。お金の配分や、何に投資をしているのかを改めてチェックしていただくと、非常に重要な示唆が得られる可能性があります。ウェブサイトをきちっと整理しておくことは、非常にオーソドックスですが、効き目のある経営施策だと私は思います。

 
編集後記:ハビタスより

D.H氏の鋭い指摘は、ウェブサイトへの投資が、いかに企業の成長と密接に関わる戦略的投資であるかを強く示しています。

「ウェブサイトは経営」という視点から、御社のビジネスに本当に貢献するウェブサイトを構築・運用するために、まずはハビタスにご相談ください。私たちは、御社の事業を深く理解し、「経営の言葉」で戦略を語れるパートナーとして、御社の成長を支援します。

 
【編集部注1:IT投資比率に関するデータについて】

D.H氏の発言にある売上高IT投資比率(IT予算/売上高)の数値は、主に(一社)日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)や(株)野村総合研究所(NRI)などの調査データに基づいています。

業種IT投資比率の目安(対売上高)主な参照元
全体の中央値1.0%前後(ただし、業種により大きく変動)NRI「IT活用実態調査」等
金融・IT業界5%〜10%JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)、NRI等の調査
製造・小売流通業1.5%程度経済産業省、各種調査
一般企業(下限)0.3%前後各種調査

(補足)
D.H氏が言及する「0.3%」という数値は、業種平均値というよりは、「IT投資を極端に抑えている層の目安」として、IT活用が不十分な企業の傾向を示すために使われることが多い指標です。ご自身の属する業界の平均値と比較し、ITへの投資が適切かどうかのベンチマークとしてご活用ください。

Key Persons Insights
覆面対談のイメージ

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