#271 AI時代のWebリニューアル・7つのステップ 『中小企業社長のリアル?な奮闘(そして…少し哀愁)』
AI時代のWebリニューアル・7つのステップ
中小企業社長のリアル?な奮闘
(そして…少し哀愁)
【第1章:ため息とひらめき】 「最近、ウチの会社に昔みたいな一体感がないなぁ…」

業績が傾いているわけではない。ただ、コロナ禍を経て在宅ワークも定着し、オフィスはなんだかスカスカしている。
昔のように社員が一丸となって盛り上がる熱気のようなものが、すっかり薄れてしまった。
「そうだ、ホームページを新しく作ってみてはどうだろう?」
特にWeb経由でガンガン営業をかけるようなつもりはない。だが、会社の顔をリニューアルするプロジェクトでも立ち上げれば、社内に新たな一体感が生まれるかもしれない。社長のそんな思いつきから、すべては始まった。
【第2章:社長の孤独と焦り】 「GEOってなんだ? レンタルビデオの話か…?」

「ホームページをリニューアルするぞ!」と社内にぶち上げた手前、社長としても少しは知識を入れておかなければならない。
しかし、横文字ばかりのデジタルの話題を、若手社員に今さら聞くのは気まずい。
誰にも会わないようコソコソと初心者向けWebセミナーの末席に座ってみたものの、講師の言葉はまるで呪文だ。「SEOからGEOへ」「AI検索の時代」…。
隣で熱心にメモを取る優秀そうな若い女性を見ながら、「こういう子がウチにいてくれたらなぁ」と現実逃避してしまう。いかんいかん、まずは自社のサイトを確認せねば。
【第3章:開かない扉】 「専務、ウチのホームページのパスワード知ってる?」

どうやら裏側(サーバー)にアクセスするにはパスワードが要るらしい。
退職した前の担当者が使っていた、やたら分厚くて古いパソコンを倉庫から引っ張り出してきた。本社ビルの片隅で、祈るように力強くEnterキーを叩く。 しかし、画面には非情にも『PASSWORD ERROR』の文字が点滅する。 「え? 知らないですよ。引き継いだの誰でしたっけ?」と専務も首を傾げる。立派な自社ビルを構え、堅実な商売をしているはずなのに、ネット上の我が家は「鍵を紛失したホコリまみれの空き家」になっていたのだ
【第4章:危険な錯覚】 「いいんだよ、前と同じ感じで。安くよろしくね!」

すったもんだの末にパスワードを見つけ出し、10年前に依頼した制作会社に電話をかけた。
「ずいぶん前ですよ。今は時代も手法も変わっていて…」
と口ごもる担当者を、社長は笑って遮った。
「いいいい、そんなの考えてないから。ウチはWebで営業するわけじゃないし、採用は外部の求人サイトを使ってるから。前と同じくらいの予算で綺麗にしてよ」
数週間後、出来上がったピカピカの真新しいデザインを見て、社長は満足げにうなずいた。立派な看板がついた。これで大丈夫だ、と。
【第5章:見えない壁(素通りされる現実)】 「あれ…綺麗にしたのに、誰もウチのサイトを見てないぞ?」

リニューアルから数ヶ月。社内の空気は少し明るくなった気がするが、Webからの反響はゼロのままだ。
「制作会社のヤツが言っていた『時代が変わった』って、こういうことか…?」
ふと、自分のスマホで検索してみる。画面の一番上には、AIが勝手にまとめた回答が表示され、ユーザーはわざわざ会社のホームページを開かずに帰ってしまう。ピカピカの看板を掲げたはずの自社サイトは、AI時代という新しい情報の交差点で、完全に「素通り」されていたのだ。
【第6章:本当の解決策(会社登記)】 「そうか、ホームページを作るって『AIへの翻訳』だったのか!」

AIは人間向けの綺麗な「ハリボテの装飾」を読んではくれない。
本当に必要なのは、表面的なデザインを変えることではなかったのだ。
会社が長年積み上げてきた歴史、確かな技術、そして他社にはない強み。その分厚い台帳に記された本質を、AIが正確に読み取れるデジタルの言葉(構造化データ)に冷徹に翻訳し、ネットの世界の強固な基盤として「登記」し直すこと。
それが、見えない世界で自社を存在させる唯一のルールだったと気づく。
【第7章:良き「壁打ち相手」を見つけよう】 「でさ、ウチもただ綺麗なサイトを作るのはやめたんだよ」

数日後。オフィス近くのカフェで、友人の経営者を相手にコーヒー片手に自慢げに(そして少し自虐的に)語っていた。
「AIへの会社登記が必要らしくてさ。横文字ばかりで参ったよ」
「なんだそれ? ウチのサイトもやばいかな?」と身を乗り出す友人。
これからのWebリニューアルに必要なのは、単に言われた通りの絵を描く業者ではない。社長のトホホな苦労話や経営の悩みをコーヒー(場合によってはお酒)を飲みながらじっくり聞き、それをAI時代に負けない資産へと翻訳してくれる「壁打ち相手」なのだ。そんな相棒を見つけることこそが、次の時代を生き抜くための最強の武器になる。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------
【編集後記(あるいは追記)】
先日、とあるデジタルの業界で働くディレクターと話していたときのこと。
「なんだかすごく、お客さんとわたしたちとの間に話題の乖離が大きくて…」と彼女はこぼしていました。
確かにそうなんです。それは私たちもいくらか感じていたことで、デジタル全般疲れというか、われわれはWebサイト周りのことなのですけど、一時期(大昔か?)の熱狂はどこへやら、特にコロナ禍以降顕著になった気がします。
一方で、Webサイトに関して言えば、在宅勤務やワークライフバランスへの注目もあって、以前にも増して中小企業における重要度は高くなってきているのですが、以前のように簡単に制作会社に依頼してオシマイというようなわけにはいかなくなっています。
さらに、生成AIの登場でWebサイトの構築や運営も大きなパラダイムの変更が起きようとしています。
そんなこんなで、まあ、有り体に言うとWebサイトですら難しい、面倒くさくなっている。あまり考えたくないというのが本音でしょう。
そうなると、デジタルからは遠ざかった方がいいという心の内での正当化をするわけです。
曰く、「うちのビジネスには関係ない」、「ウチのお客さんはネットなんか見ていない」「AIなんて嫌い(なんだかわかっていないけど)」…などなど。
ま、そんなことないんですけどね。だいたい自分がそれなりにデジタルの恩恵にあずかっているわけだし、楽しんでいたりしている。
あ、でもこれ嫌みじゃあないんです。われわれみんなだいたいそういうものだという話です。
そんなこんなで、中小企業の皆さんに「いまのWebのこと」をなんとかわかってもらおう、しかも、AI検索のことも含めた現在のリアルな状況をお伝えしたいと思って、かるーく、お話を書いてみました。
再度、誤解のないようにお伝えしておきますが、決して現場の皆様を茶化しているわけではありません。
むしろ、日々リアルなビジネスで戦いながら、見えないデジタル化の波にも必死に食らいつこうとしている「経営者のみなさんへの、私なりの愛と共感のメッセージ」です。
「あー、ウチもこんな感じだわ」と、コーヒーでも飲みながら気楽に笑って読んでいただければ幸いです。
なお、これを書いている最中に思いつき、目下もっと詳細な(たぶん…わかりやすい)冊子を書いています。
こちらも完成次第お届けするつもりです。
(追記)ちなみに、この記事に登場する少し哀愁漂う社長の挿絵たち。おわかりだと思いますが、すべて画像生成AIに描いてもらったものです。 AI時代のWebリニューアルを語るのだから、自分たちでAIを使ってみようと指示(プロンプト)を出して悪戦苦闘した結果です。どうすればAIにこの「中小企業の社長の哀愁」が伝わるのか……それもまた、一つの「AIへの翻訳(LLMO)」の難しさと面白さなのかもしれません。
