#277 AIは知っているのに「保留」する。 現場でわかったAI検索の「お役所仕事」と、中小企業の戦い方

Mar 10, 2026By habitus
habitus

AI検索は、公式サイトの一次情報を最優先する。

…と、わたしたちハビタスでもそうお伝えしてきましたし、実際、LLMO(AI検索に向けた最適化)の基本原則としては間違っていません。
最先端のテクノロジーですから、公式発表があれば光の速さで世界中の情報をアップデートしてくれる……はずでした。

しかし先日、ある歴史ある老舗企業(クライアント)のサイト運用で、AIのAIらしからぬ、ヒトかよ?と思うような「裏の顔」を目の当たりにする出来事がありました。その顛末をまとめてみます。
結論から言うと、最先端のAIは、驚くほど「お役所仕事」だったのです。

構造化データを書き換えたのに、AIが嘘をつく?

その企業では最近、社長の交代がありました。わたしたちは当然、AIが正しく認識できるように公式サイトの構造化データ(裏側の情報設計)を「新社長」へと書き換えました。いわば、AIという登記所に「社長交代の正式な登記申請」を出したわけです。
(この「登記」のたとえ話はこちらをご覧ください。)

ところが、数週間経っても、AI検索で「〇〇社の社長は?」と聞くと、平然と「(先代の)○○社長です」と答えるのです。
「AIは一次情報を優先するはずなのに、なぜだ?」と一瞬疑いました。「公式サイトの一次情報を最優先」とウソ言ってしまったか?と焦りつつ…。
デジタルマーケティング界隈では、これを「AIのハルシネーション(幻覚)」などと呼びますけど、現場でAIをあえて問い詰めてみた結果、全く違った事実が浮かび上がってきました。

AIに「ツッコミ」を入れると、平謝りしてきた

というわけで、試しに、AI検索に対してこんな風にツッコミを入れてみました。

「ホント? その情報、古くない?」

するとAIは、「その通りです。申し訳ありません、訂正します。現在の社長は〇〇氏です」と、慌てて一次情報を優先した回答に直してきました。
どこかを調べ直す素振りもなく、即答です。そしていつもの断定口調。

おわかりでしょうか。
AIは、一次情報(新社長)を「すでに知っていた(持っていた)」のです。
一次情報としての構造化データはちゃんと受け取っている。にもかかわらず、知っていたのに、通常の検索では古い情報を答えていた。

これ、引き出しの中に正式な受理書類を持っているのに、表の窓口では「まだ確認できておりません」と答えるお役所そのものではないですか。(「慎重」「正確性」を重んじていることになっているのですね)
たとえ話のつもりだったのに、本当にお役所だったんだ…と唖然となったわけです。

知っているのに知らんぷり…なーぜなの?

なぜAIはそんなマヌケなことをしたのか?(役所の方、スミマセン)。
この謎を解明するため、わたしは普段仕事の壁打ち相手にしているAIアシスタントに、直接この矛盾を問い詰めてみました。
「AIは一次情報を知ってるにもかかわらず、なぜ一般の検索結果では古い情報を出してハルシネーション(幻覚)みたいな真似をするのか?」と。

するとAIは、驚いたことに「裏の事情」を自白しはじめたのです。
それは、この企業が長年培ってきた「情報の重力」にありました。
先代社長は長年メディアや業界紙からインタビューを受けており、インターネット上には「〇〇社の社長=先代」というたくさんの記事や情報が存在しています。

AIのアシスタント曰く、AIの頭の中?ではこんな葛藤が起きていたというのです。(以下かなり要約)
「公式サイトから届出は受け取りました。だけど、世の中の権威ある記事の多くは全部『先代だ』と言っています。私(AI)の一存で世界中のデータベースを書き換えていいのか? 公式サイトが間違っていたらどうする? もっと裏取り(他の証拠)が集まるまで保留にしよう」
というような内容の混乱をしていたというのです。

なんと!最先端のテクノロジーの裏側が、まさか「稟議のハンコが揃うのをビクビクしながら待っている、お役所仕事」みたいなものだったとは。
思わず笑ってしまいました。
なんども書いてますけど、「登記」とか「役所」とか分かりやすいと思って比喩のつもりで書いていたのです。しかし、本当だった…とは。

大企業は「自動でハンコが揃う」が、中小企業は?

しかし、笑ってばかりもいられません。この事実には、AI時代における身も蓋もないルールが隠されています。

大企業が社長交代をすれば、新聞が報じ、プレスリリースが配信され、瞬く間にニュースになります。
AIのお役人は、何もしなくても外部から大量の「裏取りのハンコ」を受け取れるため、稟議がすぐに通り、情報の反映も早くなります。

一方、中小企業には、その「外部のハンコ(ニュース記事)」が勝手には集まりません。
自社から公式に「登記(構造化データの設置)」を行わない限り、AIは永遠に古い情報のままです。しかも登記を出した後も、AIの稟議を通すために自ら「スタンプラリー」をしなければなりません。

AIの稟議を通すための「地味な事務作業」

では、中小企業はどうやってAIのお役所仕事を早めればいいのか?
「コラァ!」と怒鳴り込むような物理的な窓口がない以上、答えは簡単です。あちこちの外部情報を自ら整えて、こちらでハンコを用意してあげるのです。

魔法のテクニック(ハック)なんてありません。
公式サイトの構造化データを書き換える(本丸の申請を出す)と同時に、以下の「自社で管理できる外部情報」も、一つ一つ地道に書き換えて回るのです。

・Googleビジネスプロフィール(旧マイビジネス)の登録情報
・公式SNS(Facebook、Xなど)のプロフィール欄
・所属する組合や業界団体の名簿
などなど。

AIのお役人が裏取りのためにこれらを見に行った時、「あ、公式SNSもGoogleマップの情報も全部新しくなっている!よし、これで稟議を通せる!」と安心させ、ハンコを押してもらうようにする。
しかしねぇ、ここもホンモノの役所と同じように、ちょっとしたことなんですけど、こっちが書類を揃えてあげないと動いてくれないんですね。

AIの脳は、広告や「記事の量産」では動かせない

検索連動型広告なら、お金を払えば明日からキャンペーンのバナーを出すことができます。
では、「SEO対策として自社ブログに新社長の記事を30本量産すれば、AIの認識を書き換えられるか?」というと、それも違います。AIのお役人から見れば、それは「同じ人が窓口で何度も叫んでいるだけ」であり、客観的な裏取り(外部のハンコ)にはならないからです。
(大企業のように、莫大な予算を使って外部のニュースサイトにPR記事をばら撒けるなら話は別ですが、それは中小企業の戦い方ではありません)

AIに事実を認めさせるために中小企業がやるべきことは、デジタルマーケティング的な「記事の量産」ではありません。自社サイトの裏側で論理的に事実を定義する「正しい情報設計(構造化データ)」と、自社で管理できる外部情報の地道な更新、そして審査のための「時間」です。

だからこそ、中小企業は「何か変わったこと(変わる予定)」があれば、誰よりも早く自らAIに向けた準備(裏側の設計)を始めなければならないのです。

AI時代、Webサイトは作って終わりではありません。以前もそうでしたけど…。
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AIのお役所対応、わたしたちが代わりにやっておきます。