#331 アルゴリズムに媚びる「卑屈な集客」はもうやめよう
AI時代、Webサイトを「宣伝チラシ」から「登記簿」へ変える時
生成AIによる検索の台頭により、Webマーケティングの世界が大きく揺れています。
「AI検索に自社を引用してもらうには?」「最新のAI対策(GEO)とは?」—
連日のようにデジタルマーケティング業界からは、AI時代の新しい「攻略法」が発信されています。
しかし、一連の騒ぎを見ていると、私は一つの強烈な違和感を抱かずにはいられません。
それは、彼らの視点が相変わらず「どうやってプラットフォーム(AI)の機嫌を取り、自社を拾ってもらうか」という、極めて受動的でハック的な思考から抜け出せていないことです。
多くの真面目な企業が、この「終わりのないご機嫌取りのゲーム」に引きずり込まれようとしています。しかし、あえて問うてみたいのです。
私たちはいつから、アルゴリズムに対してこんなにも「卑屈」になってしまったのかと。
「拾ってもらう」ためのSEOが奪ったもの
これまで主流だったSEO(検索エンジン最適化)は、本質的に「アルゴリズムへの迎合」でした。
検索順位を上げるために、無理矢理キーワードを詰め込み、競合と同じような見出しを並べ、文字数を稼ぐために本質とは無関係(とまではいわないまでも)な周辺情報を書き連ねる。
ユーザーのためではなく、Googleのクローラーに「拾ってもらう」ために、自社のWebサイトを「八方美人な宣伝チラシ」へと作り変えることを強いられてきたように思います。
そして今、デジマ業界は同じことをAIに対して行おうとしています。
「AIは掲示板の情報を拾いやすいから、そこに書き込みをしよう」
「AIが好む構成で記事を量産しよう」
少し立ち止まって考えてみましょう。御社のビジネスは、匿名の掲示板で愛想笑いをしたり、AIの顔色をうかがって小手先の記事を量産したりしなければならないほど、軽いものだったでしょうか。
決してそうではないはずです。
「できること」と「できないこと」を堂々と主張する
本来、成熟したビジネスにおける最強のブランド戦略とは、「何でもできます」と媚びることではなく、「自社ができること(Fact)」と「やらないこと(Not)」の境界線を毅然と主張することです。
「なんでもできるはなんにもできない」とよく言うではありませんか。
「この領域の専門技術には絶対の自信があります。しかし、〇〇のような案件はお断りしてます」
この誇り高き「Not」の宣言こそが、現場の疲弊を防ぎ、真に価値を分かち合える優良な顧客だけを引き寄せます。
しかし、従来のSEOのように「網を広げてアクセスを稼ぐ」手法では、このターゲットの純化は困難です。
ところが、AI時代は、これが可能になります。
AIは、人間の目に見える美しいキャッチコピーだけではなく、Webサイトの裏側に書かれた「構造化データ」という論理的なコードを読み取るからです。
私たちが提唱する『デジタル登記』は、AIに対するハックではありません。
自社の「Fact」と「Not」を、AIが正確に解釈できる公式な言語に翻訳し、サイトの裏側に「登記」する技術です。
「攻略」から「インフラ設計」へ
AIに対して「ウチを引用してください」とお願いするのではなく、
「ウチの公式な登記簿(境界線)はこれだ。あとはAI側で勝手に判断して、本当にウチの哲学に合う客だけを連れてこい」と突きつける。
他人のプラットフォームに出張して小手先の火消しをするのではなく、自陣のガバナンスを徹底的に高め、ノイズ(事実誤認や古い噂)をシャットアウトする。
これこそが、企業がAI時代に行うべき「大人の仕事」ではないでしょうか。
自信を持ってきっちりと自らを主張する大人の態度です。
Webサイトはもう、不特定多数の人を集めるための「宣伝チラシ」ではありません。
AIという優秀なコンシェルジュに対して、自らの実存を証明し、的確なマッチングを指示するための「登記簿」へと役割を変えたのです。
いつまでもアルゴリズムの仕様変更に怯え、振り回されるのは終わりにしましょう。
今こそ、誇り高き経営者(当然バカではない)は小手先のハックを捨てて、自社のビジネスを堂々と定義する「情報インフラの構築」に乗り出す時だと思うのです。
だって、卑屈にならなくてよくなったんだし…。
