#373 第5回:常識を疑う知力 〜AI時代にWebサイトを閉鎖する前に〜

May 01, 2026By habitus
habitus

『詩がない(しがない)世界に、愛(AI)の言葉を』

第5回:常識を疑う知力 〜AI時代にWebサイトを閉鎖する前に〜

これまで4回にわたり、現代のWebサイトを縛り付けてきた「集客」という単一のイデオロギーと、生成AIの台頭によるそのルールの無効化、そして「裏は論理、表は情緒」という新しいデジタル空間のあり方について論じてきました。

私たちが長く信奉してきた「Webサイト=集客ツールである」という絶対的な常識は、今まさに崩れ去ろうとしています。
この不可逆的なルール変更を直視できない企業は、新しいAIという情報インフラにおいて認識されず、ビジネスの舞台から静かに忘れ去られていくことでしょう。

世間では誰もが「常識を疑え」と簡単に口にします。そしてそうあるべきだと思っているはずです。
しかし、自らが深く依存している前提を覆すことは、生半可な覚悟でできることではありません。それを実行できるのは、自縛する常識を客観的に解体するだけの「知力」と、痛みを伴う変更を実践できる「実行力」を持った者だけなのです。

なぜ、私たちは「集客ツール」という信仰をこれほどまでに捨てられないのでしょうか。 「Webサイトは集客ツールではないし、そうあるべきでもない」と認めることは、経営者や現場にとって想像以上に難儀な作業です。

なぜなら、サイトを開設したその日から、ページビュー(PV)やコンバージョン(問い合わせ数)が絶対的な指標となり、それが担当者の社内評価そのものとして強固に組み込まれてしまっているからです。
「数を追うのをやめる」と宣言した瞬間、これまで注ぎ込んできた多額の投資や、数字を少しでも上向かせるために費やしてきた日々の努力を自己否定することになりかねない。
この心理的、あるいは組織的な障壁こそが、企業を「止まらない回し車」に繋ぎ止め、新しい時代への移行を阻んでいる真犯人なのです。

だが、ここで一度立ち止まり、再び冷静に歴史を俯瞰していただきたいのです。
「Webサイト=集客ツール」という考え方は、決して宇宙の不変の真理などではありません。それは、巨大プラットフォーマーの検索アルゴリズムと、効率を追い求めたデジタルマーケティング業界の構造が合致して生み出された、たかだかここ20年程度の「ひとつの考え方」に過ぎないのです。

それが絶対の真理ではなく、特定の時代背景が生んだ単なる「歴史的経緯」であると見破る知力があれば、そのルールは変更可能であることに気づくはずです。 第1回で振り返ったように、かつてのインターネットには「集客」という窮屈なモノサシ以外にも、企業の誇りや独自の美学を表現するという、もっと豊かで多様な意味(多様性)が確実に存在していたのですから。

AI時代という未知の領域を生き残るための細い道(隘路)は、前回示した通りです。 AIという巨大なシステムに対しては、自社の存在意義を裏側で論理的に「登記」する。そして、他者の時間を奪い合うような数字の簒奪戦に明け暮れる「しがない(詩がない)世界」から一歩降りる知力と勇気を持つこと。

表側の表現を、アルゴリズムの機嫌を取るための味気ない説明文から解放し、もう一度、企業本来の熱を帯びた言葉で満たす。 私たちが歩み出すこの新しい道が、かつてインターネットが夢見た多様性を、そしてビジネスにおける「詩(ポエジー)」を再び取り戻すきっかけとなることを、心から願っています。

Des mots d'AI dans un monde sans poésie 
Words of AI in a world without poetry 
詩がない(しがない)世界に、愛(AI)の言葉を