#389 「LLMOで優先表示させます」という電話がかかってきたら。

May 13, 2026By habitus
habitus

オフィスの電話が鳴りました。
営業代行、いわゆる「マッチングビジネス」の会社からのテレアポです。
その内容は、驚くべき……というより、「危うい」感じのするものでした。

「ウチのお客様で、LLMOとかWeb制作をやりたい会社さんがあるんですけど、御社にお願いできますでしょうか?」

私は即座に答えました。
 「ええ、LLMO(大規模言語モデル情報構造化)なら…。もちろんご対応しますが…」

すると、電話口の担当者は弾んだ声でこう続けました。 
「ありがとうございます! では、まずはオンラインで30分ほどお打ち合わせを…」

毎度のことなのですが、嫌な予感がした私は、話を遮って尋ねました。
 「その前に、その会社さんはどういった目的でLLMOを検討されているのでしょうか? ちなみに、LLMOという施策をどう理解されていますか?」

「ええ。LLMOをすることで、AIにその会社を優先的に紹介してもらうようにする施策だと理解しています。ウチの他の協力会社でも、優先的に引用されるようにしてくれる業者さんがあって……」

私は、思わずため息をつきました。
「……うーん。それは、ウチではできないです。」

「え? 御社、LLMOやられてるんですよね?」 
「はい。もちろん。でも、そんなことは不可能ですから。」

「え? じゃあ何をすることなんですか…」
 「……」
自分からどう理解されています?と聞いてしまったとはいえ、これを営業の電話の相手に対して話すのは…と考えて黙ってしまいました。少なくともうちのサイト見てから電話してよと思いつつ…。

説明するまでもありません。
 「そうですか、じゃあ結構です。ありがとうございました。ガチャ。」

電話は一方的に切られました。
どうやら私は、彼らにとっての「都合のいい魔法使い」ではなかったようです。

「優先表示」という名の、あまりに安っぽい嘘

電話を切った後、私は静かな怒りを感じていました。営業担当者を責めるつもりはありません。もちろん、電話してくるなら、こちらのこと調べてからにしてよという思いはありますが、問題は、彼らにそんなスクリプト(台本)を持たせ、無知な経営者に「新しい魔法」を売り歩いている裏側のデジタルマーケティングの会社です。

彼らは、LLMOを単なる「AI版のSEO」だと勘違いしている(あるいは、確信犯的にそう嘯いている)のです。
かつて被リンクを買ったり、キーワードを不自然に詰め込んだりしてGoogleを欺いたように、AIに対してもなんらかの「裏技」を使えば、優先的に推薦リストに載せられると思っているのです。(当然、そんな裏技がなんであるかは検証していないでしょう)

断言します。 AIに「金を払って優先的に表示させるハック」など、この世に存在しません。もし、そんなことを約束する会社があったら、それはごまかして売ろうとしている詐欺か、あるいはAIの仕組みを理解していない無知のどちらかです。

なぜ、彼らは「新しい嘘」をつくのか

彼らデジマの会社は、本当は気づいているはずなのです。
検索のパラダイムが変わり、これまでの「記事量産」や「キーワードハック」が通用しなくなっていることを。

しかし、彼らはビジネスモデルを止めることができません。
これまで売ってきた「ハック手法」の看板を下ろす代わりに、古い中身はそのままに、表側に「LLMO対策」という新しいシールを貼って、あまり理解できていない中小企業からお金を巻き上げようとしているとしか思えないのです。

これは単なる勉強不足ではありません。それでは済まされないと思うのです。
絶望的な変化を前にした、不毛な「延命措置」であり、自覚的な「罪」です。

 偽物のLLMOが、あなたの「実存」を汚染する

この「偽LLMO」に騙されるリスクは、お金を失うだけでは済みません。 
SEOの延長線上にある不自然な操作や、AIに好かれようとする媚びた記事の詰め込みは、AIに「この企業の情報はスパムだ」「信頼に値しないノイズだ」という負の学習(オントロジー汚染)を引き起こします。

結果として、AIの回答画面からあなたの企業は「サイレント辞退(静かに消去)」されることになります。 一度「嘘つき」だと認識された企業の輪郭をデジタル空間で修復するのは、至難の業です。

 LLMOは「魔法」ではなく「登記」である

だから私は、電話口で「優先表示はできません」と答えました。

私たちが提供しているLLMOは、AIを操作する魔法ではありません。
自社は何者であり、何の専門家なのか。その「実存」を、AIの母語である論理データとして、Webサイトの裏側に正確に、そして冷徹に「登記」する作業だからです。

AIという優秀なコンシェルジュに対して、「ウチをひいきしてくれ」と賄賂を贈るのではなく、「ウチの正しい仕様書はこれだ。あとはお前が正しく判断しろ」と、自社の境界線を毅然と定義すること。

中小企業の経営者の皆さん、甘い言葉で「新しい魔法」を売りに来る業者には、くれぐれも気をつけてください。AI時代に必要なのは、小手先のハックではなく、自社の存在理由を正しく定義し、守り抜くための「ガバナンス」なのです。