#479 今、改めて「SEO」とはなにか?
今、改めて「SEO」とはなにか?
―Forbes論考による集客ゲームのおしまいと、あたらしい情報設計のあり方
毎月のようにデジタルマーケティングの担当者や外注先から届けられる、Webサイトのアクセス報告書。そこにある数字の増減を眺めながら、なんとも腑に落ちない感じ抱いたことはないでしょうか。
「今月はこれだけアクセス(PV:ページビュー)が増えました」
そう報告されても、会社の売上や問い合わせの質が比例して上がっている実感はない。そりゃそうですよね。そのアクセスの大半は、自動でネット上を巡回する検索エンジンのプログラム(ロボット)や、自社の商品を買う気のない冷やかしの閲覧者であることが少なくありません。
実体のない、数字だけの砂の城を築き上げるために、私たちは自社の顔であるWebサイトを外部の会社に「よろしく!」と丸投げし、予算を払い続けてきたのではないでしょうか。
その「静かな違和感」に対する見事な答え合わせとなる、非常に理知的で、かつ私たちがこれまでハビタスで提唱してきたWebサイトのあり方を海の向こうから裏付けるような、素晴らしい論考がForbes Japanに掲載されました。
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参考論考:Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)掲載記事
『「SEOは終わった」ではなく「拡張した」、AI時代に問われる新たな検索戦略』
https://forbesjapan.com/
(※ForbesのWebサイトの仕様上、直接リンクで正しく表示されない場合があるため、上記のタイトル名で検索してご覧ください)
英語の原典記事:From SEO To GEO: Leaders Must Rethink Search Visibility In The AI Era / 2026年7月7日公開
著者は、バイオインフォマティクス(生物情報科学)の博士研究員としての厳格な技術的・学術的バックボーンを持ち、現在は北米を拠点とするAIデジタルマーケティングの世界的権威であるDr. Bin Tang氏。(調べました)
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今回はこの記事を補助線にしながら、手垢のついた「SEO」という言葉の正体を整理し直し、「これからのWebサイトの予算と労力の配分」について考えてみます。
日米でズレてしまった「SEO」の定義と、業界のセコい野心
そもそも、SEO(検索エンジン最適化)とは、どういうことをする活動なのでしょうか。
検索エンジンが「機械(システム)」である以上、その本来の定義は、機械が理解しやすいようにWebサイトを技術的に整えること、つまり「エンジニアリング(技術)」の領域にあります。海外の一流マーケターたちが語るSEOや、AIのアンサーエンジンに向けた最適化(GEO/AEO)の議論を見ると、彼らが一様に重視しているのは、HTMLコードを美しく書くことや、Webサイトの表示速度を高めること、そして「構造化データ(Schema.org)」を正確に記述することです。
「構造化データ」とは、検索エンジンやAIに対して、そこに書かれているテキストが「会社名」なのか「提供しているサービス名」なのかといった「情報の意味」を、正確に誤解もなく直接伝えるための世界共通の裏コードです。機械に自社の情報を伝えるためには、この機械語による記述が絶対に欠かせません。
しかし日本では、この「技術的なSEO」の重要性があまり語られてきませんでした。そこには歪んだ歴史的な背景があります。
かつてGoogleは、中身のない低品質なコンテンツを検索結果から排除するための大きなルール変更(パンダアップデートなど)を何度も行いました。
しかし、米国で実施されたこの変更が日本市場に本格的に適用されるまでには、日本語という特殊な問題もあり、常に数年のタイムラグが存在したのです。
この過渡期の隙間に、システムや技術の知識を持たない日本の「文系マーケター」が急増しました(文系の人ごめんね)。彼らは、キーワードを適度に散りばめた文字数の多いブログ記事を量産するという非技術的なアプローチによって、一時的に検索順位を上げ、アクセス数を稼ぐことに成功してしまったのです。
この「技術を無視した記事量産でも、一時的には数字が伸びる」という日本のWeb業界の成功体験こそが、「SEO=ブログ記事を書くこと」という歪んだ認識の始まりでした。
いま、検索の仕組みがここまで激変しているのに、なぜ彼らは頑なに『SEO』という古い言葉にこだわり続けるのか?
答えは、実にシンプルです。日本市場において「SEO」という看板を下ろすことは、クライアント企業が毎年計上している「数千億円規模のSEO予算」を失うことを意味するからです。「SEOが拡張したんです」と言い張らなければ、顧客のお財布を開け続けられないという、業界側の切実な生存本能(セコい野心)がそこにはあります。
本来のSEOは、もはや私たちが「LLMO(デジタル登記)」と呼んでいる技術的な防衛策と同じ地平を指しています。手垢のついた「SEO」という言葉にしがみつき、不自然なキーワードを詰め込んだコピペ同然の記事量産を売り続ける業界の都合に、もう付き合う必要はないと思うのです。
技術を放棄した「お祈りマーケティング」と日本市場の罠
この歪んだ歴史の延長線上に、昨今よく耳にする次のような牧歌的な言説があります。
「技術的な裏側の施策など、もう意味はない。人間向けに愚直に良いコンテンツ(記事)を書き、外部での評判を高めていれば、いつかAIも勝手にそれを理解してくれるはずだ」
一見、これは人間味があり、誠実で美しい姿勢に聞こえるかもしれません。
しかし、これは企業の予算や事業の存続を預かる実務家の視点から見れば、あまりに無責任な「お祈りマーケティング(他力本願の静観)」と言わざるを得ません。相手は感情を持たない「機械」です。
機械に対して、人間向けのエッセイやポエムをそのまま提示し、「いつか勝手に理解してくれるはずだ」とただ祈るだけで、自社ではコントロールできない領域に経営資源を委ねるわけにはいかないのです。
さらに言えば、Forbesの記事で語られている「自社ウェブサイトの外側(メディア、レビュー、ディレクトリ)での権威性や評判」というセオリーは、日本市場においては致命的な罠となります。
アメリカでは、生身の人間が本音で議論する巨大なフォーラム(RedditやQuora)や、信頼性の高い独立したレビューインフラが機能しているため、外部の評判がAIの学習ソースとして成立します。
では、日本のWeb環境はどうでしょうか?日本のネット空間にあるレビューやポータルサイトの多くは、アフィリエイターの自作自演や、広告費を払った順に並ぶ「ただの広告枠」で溢れています。プレスリリースやWebメディアの9割は、お金を払って掲載してもらう「もちあげ記事(ちょうちん記事)」です。
AIはすでに、これらを有料のプロモーション(やらせ)と見抜いて信頼シグナルから除外しています。このような貧弱な日本のメディア環境において、真面目な中小企業が「外部の評判を高めて、AIに自然に引用されるのを待つ」というのは、あまりにも非現実的な理想論であり、ただのギャンブルに過ぎません。
コントロールできない「他人の評判」を待つくらいなら、自分たちが唯一100%コントロールできる「自社サイトの裏側」に、直接AIクローラーを招き入れて、公式な事実を「デジタル登記(構造化)」する方が、はるかに現実的で誠実な実務です。技術を諦め、コントロール不可能な「いつかの評判」を祈って待つのは、助言や実施を任された者としての役割の放棄ではないでしょうか。
前提の崩壊 ─AIに引用されようが、人はもう来ない
それでは、こう考えるべきでしょうか。 「これからは、ChatGPTやGemini、PerplexityといったAI検索に引用され、そこから自社サイトへのアクセスを増やすために、技術的な施策(GEO)をしよう」
残念ながら、これもまた古い「集客モデル」の呪縛から抜け出せていません。
ここに、すべてのデジタルマーケターが口をつぐむであろう「最大の不都合な真実」があります。
それは、「仮にAIの回答に自社が美しく引用されたとしても、ユーザーはもう、わざわざ自社サイトのリンクを踏んで訪れたりはしない」ということです。
AIが検索結果の最上部でユーザーの質問に対し、複数のWebサイトから情報を集約し、完璧に要約して提示してしまう(ゼロクリック検索)時代において、わざわざ元リンクをクリックしてサイトを訪れる人は激減します。
つまり、アクセスを稼ぐための記事量産も、AIに選ばれるための小手先の工夫も、すべては「稼げなくなったアクセス」という幻想を追いかける、終わったゲームの残響にすぎません。
これからの時代、サイトをわざわざ訪れてくれるのは、次のような「本気の人」だけです。
・最初からその会社を「指名」して探してくる、強い愛着を持った人
・本気でその会社に人生の相談をしたい、あるいは購入意志が固まっている人(ディープ・インテント)
冷静に自社サイトのアクセス解析を覗いてみれば、かつて大金を払って集めたPVの9割は、商売にはおそらくまったくつながらないロボット(巡回クローラー)か、冷やかしだったはずです。トラフィックハックのゲーム自体が、ルール無用のままゲーム盤ごと消え去ろうとしているのです。
自社の「実存」をAIへ『公式登記』する実務
では、アクセスが稼げないのだとしたら、なぜ私たちはWebサイトを技術的に整えなければならないのでしょうか。
目的が、180度変わったのです。
これからのWebサイトの役割は「集客(大声で呼び込みをすること)」ではありません。
AIが世界のあらゆる情報を要約してユーザーに提示する世界において、「自社の正確な実存(Fact)」をAIのデータベースへ、誤解なく『公式登記』することです。
AIは、ネット上に散らばる古い噂、口コミ、時には他社の情報を混同し、自社について平気で事実とは異なる回答(ハルシネーション)を出力します。もし、あなたの会社が「私たちは、何者であり、何者ではないのか」という明確な定義を記述していない場合、デジタル空間から自社の正しい存在自体が抹殺されたり、誤ったイメージが定着したりする「サイレント失注」が引き起こされます。
あなたの会社は、単純にキーワードひとつで括られるような都合の良い存在ではないはずです。
枠からはみ出した「グレーのグラデーション(真の強みや特徴)」を持っているはずです。それを、「ウチは単なる〇〇ではない」という「Notの連鎖」を用いて、Webサイト的・論理的に「情報設計(インフォメーション・アーキテクチャ)」しておく。
私は、かつて近所にあった「100年続いた街の文房具屋」を思い出します。
消しゴムなくしたと言ったら、○○行っといで!と言われた古い文房具屋さんです。
祖母も父も、文房具はそこでしか買いませんでした。
インターネットは世界と繋がりましたが、中小企業は世界中をターゲットにしてブームを起こす必要はありません。
3,000人の身近なコミュニティがあり、そのうちの10%(300人)が「常にここで買う」ファンであれば、ビジネスは十分に回り、存続できます。
AIという新しいインフラと付き合う目的は、PVを増やすことではありません。
「その300人の大切な顧客が、AIに相談したときに、AIの誤解(ハルシネーション)に邪魔されることなく、自社の実存を正しくマッチングしてもらうこと」、それだけです。
そのために、私たちが【LLMO(情報の組織化)】と呼んでいる「裏側の登記」が必要なのです。
「技術と表現へのリスペクト」を取り戻す
二重構造モデル
私がこの仕事を始めた原点は、「ひとの情緒に、心情に、感性に訴えかけるようなWebサイトをつくろう」という想いでした。かつてのWeb制作には、制限だらけの環境の中で、いかに美しいデザイン、美しいコピー、探究された手打ちコードを書くかという、職人としての「敬意(リスペクト)」が確かにありました。
かつて弊社にアルバイトに来ていた、国立大学数学科の女の子。 彼女が手打ちしたHTMLコードは、息をのむほど綺麗でした。どこに何が書かれているか、素人の私が見ても一目で理解できる。美しい数学の証明式のような知性と体温が、そこには宿っていました。
しかし、昨今のデジマ業界は「中身なんて何でもいいから1日5回ツイートしろ」「炎上させてでもPVを稼げ」と、技術も表現も、ただの「小手先の数字集めの道具」として買い叩き、リスペクトを欠いた言葉を並べ続けています。
ハビタスが提唱する「論理と情緒の二重構造」は、この失われた敬意をWebに取り戻すための思想です。
| レイヤー | 対象 | 実務・役割 |
| 裏側のデータ層 (機械向け) | AI/検索エンジン | AIが迷わず事実を読み取れるよう、あの数学科の女の子のコードのように、冷徹なまでに論理的な情報設計(登記)を施す。ハルシネーションを防ぐ強力な防盾。 |
| 表側の表現層 (人間向け) | 生身の人間(顧客・ファン | 裏が強固に固まったからこそ、AIの機嫌を取る不自然なキーワードの制約から100%解放され、人間を魅了する尖った「表現(クリエイティブ・情緒)」を完全に取り戻す。 |
経営者であるあなたはどう考えますか?
私たちは、インターネットに「目を覚ませ」と警鐘を鳴らすつもりも、「古い集客ゲームから今すぐ降りなさい」と説教をするつもりもありません。
ただ、事実として、世界はこのようなルールへと変わっています。
検索順位を上げてPVを稼ぐための「記事量産(古いSEO)」は、AIの進化によってスパムと判定され、自社のドメインを汚染するリスクすらあること。
AIに引用されるための「露出ハック」を競ったところで、そもそも人はもうリンクを踏んでサイトにやってこないこと。
事実を並べると、Webサイトに投じるべき「予算と労力の配分」の答えは、自ずと見えてくるはずです。
企業のWebサイトは芸術作品でもなければ、単なるブログの置き場でもありません。AI時代に自社の実存を守るための、最も信頼される「公式登記所」なのです。
私たちは、いつまで終わったゲームの席に座り続けるのでしょうか。
経営者であるあなたに、最後にシンプルに問いかけたいと思います。
「事実として、Webはここまで変化しています。さて、あなたはこれからどうしますか? まだ、従来の『集客のためのSEO』に、大切なお金を使い続けますか?」
■ 編集後記(ハビタスの視点)
企業のWebサイトを、AIが正しく解釈できる「論理的な構造」へとチューニングしていく作業は、華やかなマーケティングとは異なり、極めて地味で地道な実務です。しかし、この「情報の組織化」こそが、AI時代における企業の最も強力な防衛策となります。ハビタスは、こうした時代に翻弄されないための「Webの主権回復」を、高度な情報設計と構造的チューニングの技術によって伴走し続けています。
