#523 (AI時代の)読ませたいあなたのためのWebサイト作成方法
〜大騒ぎするWeb業界をよそに、「これだけ」で十分と言える理由〜
【まとめ(たったこれだけのこと)】
不特定多数に無理やり文章を『読ませて』アクセス数を稼ぎたいのなら、広告にお金を払うか、SNSにいろいろ書けばいいのです。大騒ぎすればいいと言うべきか…。
しかし、自分の書いた大切な文章や、企業の本当の事実を、それを切実に必要としている人にだけ誤解なく『届く』状態にしたいのなら、やるべきことはたったひとつ。
学術論文が本文とセットでAbstract(要約)を出すように、自分の文章の裏側に、誠実な公式レジュメ(構造化データ)を添えて置くだけです。
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「AIに文章を要約されてしまう時代、どうすればWebサイトを直接読んでもらえるのか」
昨今、Webサイトの運営者やデジタルマーケティング界隈では、そんな話題で持ちきりです。どうにかしてAIの要約をすり抜け、ユーザーのスクロールを強引に止めさせるための「新しい対策」や「ハック」が、今日もどこかで声高に叫ばれています。
長年、効率やPVという数字を追い求めるあまり、Webの世界はいつの間にか「いかに脚色し、演出して読ませるか」という過剰なデコレーションゲームに毒されてしまいました。
本来、真っ当な製品を作り、真っ当な言葉を紡いでいればよかったはずの場所で、いつしか「伝えるための演出(マーケティング)」ばかりが肥大化してしまったのです。
ですが、身も蓋もないことを言えば、AIに要約されてサイトを訪れない読者がいるとすれば、理由はふたつしかありません。
①その要約だけで用が足りたか、
あるいは
②「そもそも、そこまで深い関心がない内容だったか」です。
本来、自分が大切に温めてきた言葉や企業の哲学を伝える行為は、相手の行動を力づくでコントロールして「無理やり読ませる」ものではないはずです。
その意味で、過剰な演出をあっさりと削ぎ落としてしまうAIの登場は、私たちをそうした「虚飾の世界」から引きずり降ろし、言葉の本質へと連れ戻してくれる良い機会なのかもしれません。
必要なのは、相手を操るテクニックではなく、自らの言葉に責任を持ち、必要な人に誤解なく「届く状態にしておく」という、至極真っ当で誠実なマナーです。
実はその作法は、何百年も前から学術の世界で当たり前に行われてきたことの中にあります。
論文を書くとき、研究者は必ず本文の冒頭に「Abstract(要約・レジュメ)」を添えます。「この記事には何が書かれていて、何が書かれていないのか」を、著者自らが客観的に宣言するのです。
これは「本文を読ませないための工夫」ではありません。
膨大な情報と向き合う読者に対し、「あなたが探している問いの答えがここにあるか」をあらかじめ示し、お互いの時間を尊重するための知的な心配りです。この要約という「外枠」があるからこそ、本文では誰に気兼ねすることもなく、深く、複雑で、熱量のある思考を自由に展開することができます。
AI時代のWebサイトが持つべき姿も、これとまったく同じです。本屋さんの棚作りを想像してみてください。
表側に置かれているのは、平積みされた一冊の本(人間のための文章)です。そこには、著者の独特な語り口や行間に漂う情緒といった、決して要約不可能な「生の体験」が詰まっています。これが著者の個性です。
一方で、その裏側には、店員や図書システムだけが確認する「書誌カード」が存在します。この本がどんなテーマを扱い、どんな思想に基づいているかを整然と記した客観的なデータです。
Webサイトにおいて、この二重構造を作るとどうなるか。
たとえばあなたが「ある映画の深い批評」を書いたとしましょう。
【表側:人間向けのWeb画面】
ここには、あなたの生々しい体験、思想、圧倒的な文体による独自の批評文章だけを置きます。検索エンジンを意識した不自然な「まとめ」や、わざとらしい「Q&A」などを差し挟む必要は一切ありません。人間がじっくりと味わうための純粋な言葉です。
【裏側:AI向けの書誌カード(※構造化データ)】
そして、人間には見えないWebサイトの裏側に、AIという生真面目な書店員に向けた次のような「公式レジュメ(※構造化データ:検索エンジンやAIにWebサイトの意味を誤解なく伝えるための標準的なコード規格)」をそっと書き込んでおきます。
[記事の種類] これは単なる日記ではなく「専門的な批評(Critical Review)」である。
[対象] 批評の対象は、映画『〇〇』である。
[著者] 書いたのは、これこれの専門性を持つ私である。
[主張の骨子] 「この映画は従来の文脈ではなく、〇〇の観点から再解釈されるべきだ」というのが結論である。
[やらないこと(Not)] この記事は、単なるあらすじのネタバレや、浅い感想、5段階評価の星取表では「ない」。
AIは、この裏側の書誌カードを読んで深く納得します。
「なるほど、この記事はただのあらすじを探している人ではなく、深い考察を求めているあの読者に差し出すべきだ」と正しく理解し、探している人に対して「ここにあなたの求める言葉がありますよ」と静かに案内を出してくれるのです。
ここで、写真を綺麗に加工し、ドライアイスで飾り立てたスーパーのチラシで客を呼ぶようなマーケティングと比べる必要はありません。
私たちは、チラシを見て安売りを目当てに来る客を集めたいわけではないはずです。
「今日のヒラメは3匹いるけれど、どれが今日の自分の好みに合うだろうか」と、専門店の店主と膝を突き合わせて話をしたいような、熱量と関心を持った読者にだけ届き、暖簾をくぐってもらえればそれでいいのです。
「AI時代はどう生き残るか」「どう読ませるか」と大騒ぎする業界を横目に、私たちがやるべきことは、実はたったこれだけのことなのです。
脚色して読ませようとするコントロールを手放してみてください。
表側には、人間が深く味わうための言葉を自由に紡ぎ、裏側には、AIが正しく理解するための公式レジュメをそっと添えておく。
あとは、読者と誠実なAIを信じて、静かに置いておく。 それこそが、時代が変わっても揺るがない、もっともシンプルで知的なWebサイトのあり方であり、真っ当に読んでもらうためのたったひとつの方法なのです。
