#283 AIに見限られるドメインパワー: データからみる中小企業のWebでの戦い方

Mar 18, 2026By habitus
habitus

先日、海外のSEOツール大手「Ahrefs」の調査結果を報じた記事を読んで、少し考えさせられることがありました。

テーマは、
「GoogleのAI検索(AI Overview)は、一体どこから情報を引用して回答を作っているのか?」というものです。

ここには、これまでのWebの常識を覆す、少し痛快で、興味深い事実が隠されていました。私なりにその現象を読み解いてみようと思います。

AIは、大企業(検索上位)の情報をスルーし始めている

実はわたしたちも、これまで「LLMO(AI検索に向けた最適化)」というのは、ドメインパワーが強い大企業(すでに検索上位にいる会社)には、そこまで切実な問題ではないと思っていました。
すでに検索トップに君臨しているのだから、AIも当然そこから真っ先に情報をすくい上げ、質問者に提示するだろうと考えていたからです。

去年の夏あたりまでは(もう少しあとかなぁ…)、その見立てはだいたい合っていたように思います。
実際、AIの回答の「約76%」は、通常の検索結果の1ページ目(トップ10)の大企業や巨大サイトから引用されていたというデータもありました。

ところが、今回の最新データは、その前提を静かに、しかし劇的に揺るがすものでした。
検索トップ10からの引用が、わずか「38%」にまで激減していたというのです。

では、残りの約6割の引用元はどこか。
検索順位が11位〜100位のサイト、さらに驚くべきことに「100位圏外」のサイトから、約31%も情報を引っ張り上げているといいます。

このデータが意味することは一つです。
AIは私たちが思っていた以上に、「ドメインパワー(企業規模やSEOの強さ)」という、これまでの絶対的な権力を気にしていないということです。

AIが求めているのは「百科事典」ではなく「文脈」である

なぜ、AIは100位圏外のサイトまでわざわざ探しに行くのでしょうか。
ここには、ユーザーの「検索の仕方の変化」が影響していると考えています。

ユーザーは今、単語をブツ切りにして(キーワードを入れて)検索するのではなく、自分の具体的な状況や悩みを、そのまま文章でAIに尋ねるようになってきています。
AIも賢くなり、その言葉の裏にある「文脈」を的確に読み取れるようになってきているのでしょう。
だからこそ、大企業が用意した「誰にでも当てはまる網羅的でツルッとした説明文(百科事典)」では答えきれない、より具体的でリアルな文脈への答えを、生真面目に下位サイトの中まで探しに行っているのではないでしょうか。

これは、中小企業にとって非常に面白い状況です。

以前のブログでも書きましたが、大企業と違い、中小企業のビジネスはそもそも白黒はっきり説明しきれない「グレーの陰影」に本質があります。
SEOのセオリーでは「御社は何の専門ですか?」と簡潔な定義を求められますが、現場の経営者は「いや、単なる〇〇ではない」「あれとも少し違う」と否定を繰り返します。その「Notの連鎖」の果てに残った偏屈な?こだわりこそが、他社にはない自社の本当の輪郭であり魅力です。

大企業は構造上、誰もが理解しやすい「分かりやすい定義」を採用せざるを得ません。しかし、AIがユーザーの深い文脈を読み取って情報を探すようになった今、中小企業が持つ「Notの連鎖」の先にある独自のスタンスこそが、AIの求めるピンポイントな答えに合致する可能性が高いのです。

表には「情緒」を、裏側には「論理」を。

となれば、中小企業はこの状況をどう活かすべきか。
ここで重要になるのが、「表の表現」と「裏の配線」を切り離すという考え方です。

これまでのWebサイトは、SEOで評価されるために、表側の見える部分に「分かりやすく、説明的な文章」を書くことを半ば強要されてきました。情緒的な言葉や独自の思想は「ポエム」と揶揄され、ノイズとして削ぎ落とされてきた歴史があります。

しかし、自社が何者であるか(そして、何者でないか)という一次情報を、サイトの裏側に「構造化データ」として、AIが読み取れる論理で静かに記述してあげればどうなるか。

表側のWebサイトは、SEOの束縛から解放されます。
人間のために、中小企業ならではの「グレーな部分」や言い切れない魅力を、情緒的なコピーや自由なデザインで存分に表現できるようになるのです。
AIには裏側で論理を渡し、人間には表側で情緒を届ける。これこそが、ハビタスが考える情報設計(LLMO)の本質です。

巨大な資本が動く前に、静かに配線を済ませる

検索トップ10に君臨する大企業のサイトがAIに選ばれなくなり、代わりに100位圏外のサイトが3割も引用されている。
これまでWebの世界を支配していた「ドメインパワーという重力」が、今まさにふっと軽くなっている、極めて稀有なタイミングです。

いずれ、大企業もこの事実に気づき、莫大な予算を投じて裏側のデータ整備に乗り出してくるでしょう。彼らが巨大な資本を使って「無難で巨大なデータ」をWebの裏側に流し込み始めれば、AIの検索空間にはまた別のノイズが生まれ、状況は変わってしまうかもしれません。

だからこそ、中小企業は「今」動くべきだと考えています。

AIがドメインパワーを無視し、純粋に「文脈の合致」だけで情報を拾い上げている、このクリアな状況下で。
自社の「グレーの陰影」や「Notの果てにある本質」を、いち早く裏側の論理(構造化データ)として翻訳し、AIに自社の座標をきっちりと認識させてしまうこと。

巨大な資本の波が押し寄せてくる前に、自社の存在意義を静かに、しかし確固たるものとして配線し直し、Webサイトに「表現の自由」をいち早く取り戻す。
ハビタスの「月額8万円の保守(WebDirector)」は、皆さんの会社ならではのその「翻訳作業」を静かに伴走するためのサービスだとお考えいただければと思います。