#73 第6回 「データ分析」でWebサイトを改善:アクセス状況を把握し、効果を測定する

1. はじめに:GA4で「目的」を見据えたWebマーケティングへ
中小企業の方々、Webマーケティングの成果、「なんとなく」の報告で終わらせていませんか?
2020年10月に登場したGoogle Analytics 4(GA4)は、従来のアクセス数中心の分析から、より詳細な顧客行動と戦略に基づいた効果測定へと進化しました。しかし、その強力な機能を活かすためには、「何を知りたいのか?」という明確な目的意識が不可欠です。
ここも同じ話で、重要な点ですが、GA4を使えば漫然とデータを調査できるとか、具体的な解決策が自動的に得られると考えがちです。しかし、最も重要なのは、そもそも何を目的にWebサイトを分析するのか、という明確な意図を持つことです。
ある種の意図=意思を持ってツールは利用すべきなのです。(なんかわかりきった話ですよね、でも、なかなかできていない…)
よく以前は、うちのサイトどんなもんなんですかね?解析データもらえませんか?なんて言われることもありました。いったい何を知りたいのか?それを知ってどうしたいのか?と考えることないままのデータ集めは全く意味がない!
想像するに、担当者が上司に「うちのサイトこんな風になってます」と説明するための資料であり、一方上司の方もああ、そういう書類があるなら大丈夫ね…くらいの感じだったんだと思います。無駄な書類と言われてもしかたがない。まさにブルシットジョブ(Bullshit Jobs)を再生産し続けていたわけです。思い当たるところありますよねぇ…。
確かに以前の解析ツールで取り出せるデータも貧弱だったので、ある程度しょうがないところはあったかと思うのですけど、目的ないまま様々な施策が実施されているのは同じことなのです。
GA4登場の衝撃は、目的なき調査は全く意味ないものにしてしまいます。裏返せば目的さえはっきりさせれば、より詳細なデータを収集し、改善に生かせるようになったわけです。
今回は、GA4の本質を理解し、目的を持ったデータ分析でWebマーケティングを成功に導くための考え方をお伝えします。
ま、とはいえ、ほんのさわりでしかありませんけど。
2. 進化したGA4:「なぜ?」を深掘りする分析へ
GA4は、単なるアクセス数の集計ツールではありません。イベントベースの計測により、ユーザーがWebサイト上でどのような行動を起こし、それが最終的な成果にどう繋がっているのかを詳細に分析できます。この進化は、「何が起きたか」だけでなく、「なぜそれが起きたのか」を深く理解するための強力な武器となります。
しかし、この進化を活かすためには、分析する側の意識改革が不可欠です。
…とか書きましたけど、巷にあふれる「意識改革」という言葉。つらいですよね。真面目に考えればかなりのプレッシャーです。どこにどう意識を変えればいいのか?それは私にできる改革なのか?そうそう改革なんてできません。
ましてや、仮に担当者であるあなたが意識改革に成功したとしても、社内に説明するにも、社内も意識改革してもらわないと、言葉が通じない…理解されない。
まあ、ひとまず、ここでは「調査は目的をもってするものだ」という程度の意識改革だと思うことにしましょう。
なにを調査するのか?したいのか?をはっきり決めましょう。
3. 「とりあえず、データ」では何も見えない:目的意識の欠如という落とし穴
「上司に報告するために、とりあえずアクセス数とコンバージョン率のデータが欲しい」
もし、あなたが担当者にそのような指示を出している、あるいは制作会社にそのような依頼をしているとしたら、GA4の持つポテンシャルを全く活かせていません。目的のないデータ収集は、単なる数字の羅列に過ぎず、具体的な改善アクションに繋がることはありません。
GA4は、あなたが「何を知りたいのか?」という問いに対して、深く掘り下げた答えを見つけるためのツールです。漫然とデータを眺めるのではなく、明確な目的意識を持つことが、GA4活用の第一歩です。
しかし、これでも抽象的ですね。
具体的な例をひとつ。テクニカルな話はここでは書かないようにしているので、どう設定するか?等ははぶきますが、アクセスユーザーの行動を把握することができます。GA4では、ユーザーの行動を捉えるために「イベント」という指標を使います。
そして様々な「イベント」を設定できます。
例えば、自社から送信しているメールマガジンからウェブサイトを開いたかどうか?ページをどのくらいスクロールしたか?どこをクリック(タップ)したか?自社で提供しているアプリなどへのアクセスも一緒にみることができます。などなど…。
こんな風にユーザーにどうしてもらいたいか?あるいはユーザーはなにをしたいのか?というこちらが調査したい事柄にあわせて設定できるのです。おわかりですよね。目的がはっきりしないとダメだということなのです。
(とはいえ、これまで関心がなかったひとからすれば、それがわかるから、だからなんだ?となるのかもしれませんね。それはそれでこれまでビジネスがうまくいっていた証拠…なのかも。)
4. 経営者が「戦略の検証」のためにGA4に求める視点
さて、経営者やマネージャーがGA4を見るべき視点は、繰り返しますが「コンテンツ戦略が、事業目標の達成に貢献しているか」という一点です。それ以外をあーだこーだいうのはかまいませんが、経営者やマネージャーの仕事ではないわけですし、それがわからないからデジタルが苦手というのはお門違い。普段の経営者の仕事をデジタルでも同様に考えればいいわけです。
GA4も同様。恐るるに足らず!です。
戦略と成果の連動性
設定したターゲット顧客の行動は、意図した通りにWebサイト上で起こっているか?特定のコンテンツが、問い合わせや採用応募といった成果に繋がっているか?
ま、簡単ですね。ウェブサイトのコンテンツが想定したとおりに利用されているかどうか?を見極めることです。
ここを見てほしい!というコンテンツがちゃんと見られているかどうか?想定したようなアクションをとってくれているかどうか?です。
投資対効果の検証
どのコンテンツ、どの流入経路が、最も効率的に成果を生み出しているか?費用対効果の高い施策に注力するための判断材料となります。
流入経路の話は簡単に頭に入れておいてください。検索エンジン経由でユーザーはサイトを訪問してくることが多いわけですが、ウェブサイトを制作する際にはトップページからのコンテンツのスムーズな流れを想定して作ります。ですが、検索エンジン経由でサイトの途中(横から)入ってくることも多いのです。なかなか構築当初考えたようにユーザーは動いてくれません。流入経路も検索エンジンからなのか?他の入り口からなのか?様々な施策を吟味する必要があります。
ボトルネックの特定
成果を阻害している要因は何か?ユーザーが離脱しやすいポイント、コンバージョンに至らない原因などをデータから特定します。
これはなかなか判断しにくいのですが、離脱ページをみることも大切なポイント。なぜこのページで離脱が多いのか?あるいは少ないのか?その原因を探りましょう。
新たな機会の発見
データの中に、これまで気づかなかった新たな顧客層やニーズ、効果的なコンテンツの方向性などが隠されている可能性があります。
想定していなかった顧客ニーズを見つけることもあります。あ、こんな人が感心もってくれるんだということがわかったときなどは結構嬉しいものです。新たなターゲットになる可能性も十分にあります。デジタル特有の顧客層があります。柔軟な眼をもって考えたいものです。
5. 意味のある「問い」が、価値ある「答え」を導く
GA4から有益な情報を引き出すためには、明確な「問い」を持つことが重要です。
「〇〇というターゲット顧客は、Webサイトのどのコンテンツに最も関心を示しているか?」
「△△という目的を達成するために、最も効果的なコンテンツは何か?」
「□□という流入経路からのユーザーは、コンバージョンに繋がりやすいのか?」
「特定のページにおけるユーザーの離脱が多いのはなぜか?コンテンツの内容、導線、デザインに問題があるのか?」
こんなような問いを持つことで、GA4の膨大なデータの中から、本当に必要な情報を見つけ出すことができます。そして、その答えが、具体的な改善策へと繋がるのです。
…とこれも簡単に書きましたが、こういう問いを発することができれば、バッチリなのです。必要なのは答えではない。問いを発することができるようになることなのです。自ずと答えは導かれます。
以前、哲学的アプローチとして書きました(「#17 哲学するウェブ戦略」https://habitus.co.jp/blog/-17)。ここでも問いかけることが重要なのです。
6. まとめ:「目的」という羅針盤でGA4を使いこなす
GA4は、Webマーケティングの成果を最大化するための強力なツールですが、その力を引き出すためには、「何を知りたいのか?」という明確な目的意識が不可欠です。
「とりあえずデータ」を集めるのではなく、コンテンツ戦略の検証という視点から「意味のある問い」を立て、GA4の進化に合わせて分析の軸を深掘りしていくこと。それこそが、データに基づいたWebマーケティングを実現し、事業成長へと繋げるための唯一の道筋です。
でも、そんなエラっそうなこと書いていますが、真面目にビジネスに取り組んでいる人にとっては当たり前のこと。ここでも当たり前のことを当たり前に行うことが重要だというだけです。頭を使いましょう。考えましょう。問いかけましょう。
次の記事では、GA4で得られたデータをチームで共有し、コンテンツの改善に繋げていくための具体的な方法について解説します。データ分析を「個」の取り組みで終わらせず、「チーム」の知恵と力を活かしてコンテンツの質と成果を高めていくためのステップを見ていきましょう。
===================================
【中小企業のためのコンテンツ戦略入門】
第1回 中小企業が「コンテンツ戦略」で勝つ! :DX時代の新しい競争ルール
第2回 「コンテンツ戦略」の基本をマスターしよう :Webサイトをビジネスに活用するための考え方
第3回 「魅力的なコンテンツ」で顧客を惹きつける:Webサイト訪問者をファンに変える方法
第4回 「戦略的コンテンツ設計」で成果を最大化:問い合わせを増やし、売上につなげる
第5回 「コンテンツの質」を高める:編集・制作・管理のノウハウ
第6回 「データ分析」でWebサイトを改善:アクセス状況を把握し、効果を測定する
第7回 「チームで作る」コンテンツ戦略:上手なチームの作り方あるいは愉しいチームにする方法