#89 第9回 実践編:コンテンツ戦略始動!スグ始めよう

1. はじめに:さあ、いよいよ実践!でも、どこから?
中小企業の皆さん、これまでの連載で、コンテンツ戦略がWebマーケティングを成功させる「指針」であり、webに関わる皆さんが、豊かな表現をするための「台本」であり、Webサイトを「使えるパートナー」にするための必須の考え方であることをお伝えしてきました。AI、動画、データ分析…と、色々な話をしてきましたが、きっと「わかったけど、結局のところ、うちの会社は何から始めればいいんだ?」と感じている方もいるのではないでしょうか?ま、仕事ができるせっかちなあなたは、そう考えたくなります。
制作会社に相談すると、じゃリニューアルでも…と言われそうですけど、ちょっと待った。リニューアルはもちょっと後です。この連載を読んでくれた賢明なあなた!は、始めるのはそこじゃないとおわかりですよね。コンテンツ戦略の重要性はご理解いただいていると思います。
正直なところ、コンテンツ戦略って、ちょっと地味で面倒くさい話に聞こえるかもしれません。
「とにかく早く、見た目をなんとかしたい!」「そんな面倒な回り道はいいから、すぐに結果を出さないと!」という声が聞こえてきそうです。でも、その「面倒くささ」が、結局、中小企業のWebサイトが残念な状態になっている一番の理由だったりもしています。
目先の結果に振り回されてはダメだと知りつつも、ビジネスはスピード!(この絶対的信仰!ありますよね)腰を落ち着けてなかなか吟味したりできない。むしろ一生懸命考えている人は仕事できない人、無能扱いされたりします。
上層部からの指示も、いつできるんだ?という催促ばかりというようなこともあります。わたしたちもコンテンツ戦略の重要性を常々提案しているのですが、重要だということはわかってもらっているようなのですが、ひとまず、急ぎ見た目をなんとかして、変わった感を出したい…とか、制作費は出るけど、コンテンツ戦略に避ける時間も費用もないと断られたり。たいした時間でも費用でもないのに、いかんともしがたい場合が多々あります。
しかし、繰り返しになりますけど、あえて、いいます。落ち着いていきましょう!(考えろ!)
面倒くさいと思われるかもしれませんが、大丈夫です。楽しみを見いだしましょう。楽しければ面倒さも少しは緩和されます。
コンテンツ戦略は、壮大な計画をいきなり完璧に実行することではありません。むしろ、「小さな一歩」を確実に踏み出し、それを継続することにこそ意味があります。今回は、その「小さな一歩」が、実は社内外に大きなインパクトを与える、ちょっとした「仕掛け」になる話と、Webサイトの運用で「忘れがちだけど、実はとても大切」なこと、そして「今日からでもできること」に焦点を当てて、実践への具体的なヒントをお届けします。
これこそが「愉しい知識(La gaya scienza)」(https://habitus.co.jp/blog/-19)です。
2. コンテンツ戦略「最初の一歩」の落とし穴:見落としがちなこと
Webサイトのコンテンツを考える際、多くの企業がまず「何を書きたいか」「どんなデザインにしたいか」から入ってしまいがちです。しかし、本当に成果に繋げるためには、その前に確認すべき、いくつかの「忘れがちなこと」があります。
誰のためのWebサイトなのか、もう一度確認する(ターゲット/ペルソナの深掘り)
コンテンツ戦略の根幹であり、何度も話してきたことですが、これがブレるとすべてが瓦解します。貴社のWebサイトを「誰に、どうなってほしいか」という視点で、もう一度、具体的な人物像(ペルソナ)を再確認しましょう。既存のお客様の声や、営業担当者へのヒアリングは、思わぬ顧客像が浮かび上がる「ネタ帳」です。会議室で頭をひねるより、現場の声に耳を傾ける方が、ずっと面白い発見があるはずです。
ここで、これもスピードを鈍らせるような話かもしれませんが、社内へのヒアリングなどは、真面目!にやらないことです。重要なのは「雑談・余談」です。思い出してみてください学生時代、教員が講義でしゃべっていた内容なんてほとんど憶えていないでしょう。憶えているのは雑談!やちょっとした余談。しかもそれは自分の人生の指針になっていたりするようなこともありませんか?雑談や余談の中に重要なヒントが隠れているのです。
チーム編成のところでも書きましたが、チームはラフに普段からいろんな話ができることで円滑になるのです。(https://habitus.co.jp/blog/-79)
Webサイトの「目的」を、たった一つ明確にする
問い合わせ数を増やす?採用応募数を増やす?ブランド認知度を高める?欲張りすぎると、コンテンツの方向性が曖昧になります。まずは「Webサイトで一番達成したいこと」を一つに絞り、チームで共有しましょう。明確なゴールがあれば、そこに向かって進む道のりが、グッと楽しくなります。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」というではありませんか。昔の人はいいこと言うねぇ…。と感心したくなるのですが、マルチタスクとは同時に複数の仕事をこなすことであり、それが有能であると言われているようですが、きっちりひとつひとつ進めていける人の方が、頭脳労働には向いているような気がします。ひとつ終わらせて、次!って感じです。まずは目の前の課題に集中する。
「Webサイトの外側」にあるコンテンツを見つける
Webサイトにある記事だけがコンテンツではありません。お客様への提案資料、営業トーク、社内研修資料、製品カタログ、F.A.Q.のメモ、さらには社員の頭の中にあるノウハウもすべてコンテンツです。これらの「眠れるコンテンツ」を発掘し、Webサイトで活かす方法を考えましょう。社内の引き出しを開けてみれば、「こんなに使えるネタがあったのか!」と驚くかも。
それこそ反時代的で怒られそうですが「飲み会」。若い人たちは嫌がるかもしれませんけど。近所のカフェでもいいかもしれません。でも、雑談をできる場所を設定しましょう。眠れるコンテンツを引き出す機会を作るのです。
3. 「小さな一歩」で「大きな変化」を:トップページを「戦略の顔」にする
「リニューアルは予算も時間もかかるし…」そうですよね。大きな作り直しはスグにはちょっとキツイ。ま、じゃ少しだけ変えましょう。
Webサイトの「顔」であるトップページを少しだけ意識して変えるだけでも、社内外に大きなインパクトを与えることができます。
これが、コンテンツ戦略の「最初のとっかかり」として、あなたの会社を動かす強力な一歩になるはずです…。なればいいな…なるかなぁ…いや、きっとなります!
…と書きましたけど、そもそも自社のサイト見ていない人結構います(許しがたいですよね)。
インパクトを与えるためにも、変更したらとにかく社内にはくどいくらい宣伝しましょう。
いろいろ感想もらえるといいですよね。
トップページの「キャッチコピー」を真剣に考える
Webサイトを訪れた人が最初に目にする言葉。ここに、「私たちは何をしている会社で、誰のために何ができるのか」を、一言で、かつ記憶に残るように表現してみましょう。ありきたりな表現ではなく、あなたの会社の「らしさ」が伝わる言葉を探しましょう。簡単に書きましたが、これは難しいかもしれません。なかなか納得できない。できたとしてもどっかで見たり聞いたりしたことがありそうな気がします。
ここは真剣に考えることではあるのですが、ここでも焦らないこと。雨の日の帰り道や食事中にふっと思いついたりするのです。「降りてくるのを待つ!」くらいの姿勢でいきましょう。ひとりデスクに向かって「あと30分。三つ考えよう!」ってのは辞めた方がいいです。断言します。どうしようもないものしか出ません。
【ちょっとした楽しみのヒント】
ひとり考えるのは、重要なことではあるのですが、煮詰まりがちです。
だからミーティング!
この「キャッチコピー」を考えるミーティングは、社内で盛り上がるいいチャンスです。付箋をたくさん用意して、ホワイトボードに各自が考えたコピーを貼り出してみましょう。まるで謎解きゲームのように、みんなでアイデアを出し合ううちに、ハッとさせられるような「会社の顔」が見つかるかもしれません。ネタだしコンテスト。ひとまずブラックなネタもありにしましょう(実際は使えないでしょうけど…)。地味な会議を「遊び」に変える、そんなファシリテーターの視点も大切です。
トップページに「お客様のリアルな声」を載せてみる
「お客様の声」は、何よりの信頼の証です。トップページの目立つ場所に、写真付きで(写真は無理かなぁ…)、お客様の具体的な感想や成功事例を簡潔に紹介してみましょう。
これは、新規顧客が「この会社、良さそうだな」と感じる強力なフックになります。これは効きます!
お客様の「生の声」が、あなたの会社の信頼度を何倍にも引き上げてくれるはず。
商品やサービスを検討する際に、お客様の会社の規模や業態に似ているというのはかなり大きな判断材料になっています。webサイトを作る際に、どういうサイトがいいですか?と聞くとほとんど同業他社のサイトをピックアップします。ま、それくらいしか見ていないというのもあるわけですが、類似案件ということで大きなフックにはなるでしょう。
「社長からのメッセージ」を動画にしてみる
文字だけでは伝わらない、社長の熱意や会社の雰囲気を伝えるのに動画はいいかもしれません。ちょっと意外!な感じがしませんか?スマートフォンで簡単に撮影できますし、プロでなくても「想い」は伝わるものです。たった数分の動画でも、企業の「顔」としてのトップページに人間味を加え、顧客や採用候補者に強い印象を与えることができます。なにより社長の「人となり」がわかるというものです。中小企業の場合オーナー社長の場合も多いわけですから、そりゃ熱いメッセージを語れるはずです。
前回、下手な動画は顧客をなめていると書きましたけど(https://habitus.co.jp/blog/-83)、社長が自らしゃべるという手作り感はまあ、いいんじゃないでしょうか?
大企業にはマネできないですし、社長が自ら、企業のトップとして熱いメッセージを込めて語る「手作り感」は、一般的な動画とは意味合いが異なるでしょう。大企業には真似できない、その「生身の言葉」や「そのひととなり」が、多少の映像クオリティの粗末さを超えて、かえって信頼や親近感を生むことがあります。
ある種、下手なYouTuberの動画のように、技術的な巧さではなく「伝えたい情熱」が前面に出ることで、唯一無二のコンテンツとなり得るのです。上手に撮れることに越したことはないですが、それ以上に愚直に「社長の想いが伝わるか」が重要です。
まあ、こういうことを言うと、「うちの社長顔出たがらないよ」とか「口下手なんだよなぁ…」「印象悪くない?」という社内からの声も出てきそうだし、社長本人もそんなようなことを薄々自覚していたりするので、いやいいよ…とかいいそうです。プッシュしましょう。会社の顔すなわち社長の顔なのです。
「社長がWebで話してる!」その意外性が、社内でも話題になるかもしれません。
これらの「小さな変更」は、見た目のリニューアルほど費用や時間はかかりませんが、コンテンツ戦略の視点が入ることで、Webサイトが「生きた営業マン」や「魅力的な採用担当者」として機能し始めるきっかけになります。そして、その変化は社内外に目に見える形で現れ、コンテンツ戦略への理解と意欲を高めるでしょう。
つまらない例と思いなさるな!こんな些細なアイデアでいいのです。それよりコンテンツが更新されないことの方が問題なのです。
4. 「持続可能な運用」のための地味だけど大切なこと
繰り返し何でも書いてますが、コンテンツ戦略は、一度作って終わりではありません。継続して「育てる」ことで、Webサイトは真価を発揮します。そのためには、外部の制作会社任せにせず、社内で無理なく運用できる「仕組み」を整えることが肝心です。その方が楽しいですし、ちゃんと仕事していることになりませんか?
コンテンツの「持ち主」を決める(オーナーシップの明確化)
「誰が、どのコンテンツの最終責任者なのか」を明確にしましょう。コンテンツは「書いたら終わり」ではなく、常に最新に保ち、成果を追跡する必要があります。コンテンツの種類ごとに担当部署や担当者を割り当てることで、責任感と品質が向上します。まるでWebサイトの「番人」を決めるように、それぞれのコンテンツに担当者を置いてみましょう。変な言い方ですが、無理のないプレッシャーをかけることなのです。
「古い情報」の処理ルールを決める(コンテンツの棚卸しとアーカイブ)
Webサイトは情報がたまりがちです。古い情報が残っていると、顧客の混乱を招いたり、会社の信頼性を損ねたりする原因にもなります。書いた本人も忘れちゃったりすることもありますし、本当に古いものだったりすると、外部からはきちんと閲覧できなくなっていたり、古い情報を見て問い合わせがあったり…
社内の担当者の備忘のためにずっと残しているようなサイトも見かけます。
公開してていいのか?と思ったりするのですが、こうなると労力(お金も)を使って会社の信用を落とすために頑張ってしまっているような状態です。
定期的にコンテンツを見直し、「更新する」「削除する」「アーカイブする(過去の記録として残す)」といったルールを決めておきましょう。ま、ルールとまではいかずとも、コンテンツの定期検診は大事です。
システムやプログラムの診断はよく耳にしますが、同様にコンテンツについても診断すべきなのです。
Webサイトの「大掃除」をするように、不要な情報をスッキリさせるだけでも、安心できるし、きっと気分が晴れるはずです。
「言葉遣い」のルールを決める(トーン&マナーガイドラインの作成)
複数の人がコンテンツを制作する場合、文章のトーンや言葉遣いがバラバラになりがちです。「です・ます調」か「である調」か、漢字・ひらがなの統一、専門用語の表記ルール、NGワードなど、簡単なガイドラインを作成するだけで、Webサイト全体の統一感が保たれ、信頼性が向上します。
ただし、これは「やり過ぎ」に注意です。こういう書類上のルール作成に一生懸命になってしまう生真面目な人もいます。NGワードなどはそうなりがちで、以前膨大なNGワード集を渡されて、記事作成の依頼を受けたことがありました。さらにはNGワード集自体が社内にあることを公表しないという理由で、後チェックでの記事作成依頼もありました(何がダメなのか記事制作者はわからないわという事態に…)。コンプライアンスもここまでくると笑ってしまいます。また大真面目にそれを作った人がいるということは驚きです。書類作業は控えめに。
社内の「Webサイト用しゃべり方ルール」を決める、そんなゆるーい感覚で取り組んでみてください。
5. 「今日からできる」小さな実践リスト
難しく考えずに、まずはここから始めてみましょう。
自社サイトの「お気に入りページ」を3つ選んで、なぜ好きか考えてみる
これ単純ですがオススメです。
お客様の視点に立つ練習になります。同時に、改善点を見つけるヒントにも。
Webサイトのコンテンツを作る際には、どうしても、こちらの主張が先にたちます。伝えたい内容はこれだ!となったときに、それをお客様がどう受け取るのか?まで考えられない。
社内の事情が丸出しになっていることもあります。(自分たち(部署?)の都合しか考えていないので、そのことに気づいていないんですけどね)
お客様(ユーザー)にそんな社内事情をくみ取らせてしまっているわけです。ま、そこまでくみ取ってくれるお客様はかなりいい方たちだと思います。通常は「ダメだなここの情報は」とか「この会社やばそう」とか思われていると考えた方がいいでしょう。
「私たちが好きなページは、お客様も好きだろうか?」と、ちょっとした探偵気分で考えてみましょう。
既存のブログ記事をひとつ、声に出して読んでみる
誤字脱字、不自然な表現に気づくはずです。(第5回で話しましたね https://habitus.co.jp/blog/-71)まるで朗読会のように、チームメンバーと交代で読んでみるのも、意外な発見があるかもしれません。昭和の朝礼のように大声張り上げてみるのも気分がいいものです(おじさん上司は喜んだりして…)。
会社概要ページを「共感」の視点で見直してみる
会社の「物語」を伝えるチャンスです。(第4回で話しましたね https://habitus.co.jp/blog/-67)「うちの会社って、実はこんな面白い歴史があったのか!」と、自分たちで再発見できるかもしれません。学生時代の歴史嫌いを克服しましょう。
Webサイトの目的を、チームのメンバーに聞いてみる
認識のズレがないかを確認する良い機会です。「Webサイトって、何のためにあると思う?」と、軽い気持ちで聞いてみれば、意外な本音が見えてくるかも。
見たことない…とか言われても落ち込まないように。
GA4で、一番アクセスが多いコンテンツを調べてみる
何が顧客の興味を引いているのか、意外な発見があるかもしれません。(第6回で話しましたね https://habitus.co.jp/blog/-73)「え、こんな記事が人気なの!?」という驚きが、次のコンテンツ企画のヒントになるはずです。
ぜんぜん仕事とは関係のない社長のブログ記事がウケてたりしてもがっかりしないように。
社内の誰かに、Webサイトの「改善点」を一つ聞いてみる
社内からの客観的な意見は、外からの視点を得る第一歩になります。「Webサイト、ここがちょっと気になるんだけど…」と、気軽な雑談から始めるのがおすすめです。
新入社員に聞くのはいいかも。入社前に他社とも比較してますから。
6. まとめ:コンテンツ戦略は「育てる」もの
コンテンツ戦略は、一朝一夕で完成するものではありません。まるで、庭の木を育てるように、日々手入れをし、季節に合わせて手を加え、丹精込めて育てることで、やがて豊かな実を結びます。
とはいえ、厳密な「手入れ」ルールは細かく設定しない方がいいでしょう。ダイエットのための毎日15分のトレーニングが続かないのと同じです。「少しずつ」はその通りなのですけど、「きっちり少しずつ」は疲弊します。楽しんで、興味を持ってやれることが大切です。
完璧を目指すのではなく、まずは「小さな一歩」を踏み出し、一つずつ改善を重ねていくこと。そして、「なぜこのコンテンツを作るのか」「誰に何を伝えたいのか」というコンテンツ戦略の軸を常に意識し続けることが、Webマーケティングを成功へと導くための最も確実な道筋となるでしょう。
次の最終回では、これまでの連載内容を総括し、皆さんのWebサイトが「事業成長の強力なパートナー」となるためのメッセージをお届けします。
===================================
【中小企業のためのコンテンツ戦略入門】
第1回 中小企業が「コンテンツ戦略」で勝つ! :DX時代の新しい競争ルール
第2回 「コンテンツ戦略」の基本をマスターしよう :Webサイトをビジネスに活用するための考え方
第3回 「魅力的なコンテンツ」で顧客を惹きつける:Webサイト訪問者をファンに変える方法
第4回 「戦略的コンテンツ設計」で成果を最大化:問い合わせを増やし、売上につなげる
第5回 「コンテンツの質」を高める:編集・制作・管理のノウハウ
第6回 「データ分析」でWebサイトを改善:アクセス状況を把握し、効果を測定する
第7回 「チームで作る」コンテンツ戦略:上手なチームの作り方あるいは愉しいチームにする方法